経済成長のためには社会全体として給与水準を上げていく必要があります。一方、人件費が高騰していく中でコスト競争に打ち勝っていくためには、経営の機能として、言われたことだけをこなせばよい人たちの定型的な業務を人工知能や人工知能を装備したロボットを導入して効率化を図っていくことを考えます。そこで働く人は不要な存在とみなされるようになってしまいます。技術革新の追求、経済合理性を追求する経営モデル、包摂さのある社会の発展の間には矛盾が生じてしまいます。
- これまでに確立されてきた経済モデルの全てにおいて、労働力は企業が利益を追求する事業を実現するための資源であり、すなわち、そこでは、働く人たちは労働を提供するヒューマンリソースとして扱われてきました。有名なプリンシパル=エージェントモデルでは、そこで働く人たちに利益を実現するための仕事が定められ、権限を委譲された範囲で合理的にその仕事をこなし目標を達成していかなければなりません。そして、その決められた以外の目的のために労働力を浪費することはモラルハザードと見做されます。
- 日本では、高度経済成長期に確立した職能資格制度の下、職務定義に沿ってマニュアル通りに働く文化は育っていません。また、今でも根強く終身雇用と年功序列の慣行が残されており、そこに全社員を対象にして米国型の成果主義が導入されてきました。さらには、職務の範囲が曖昧ないまま同一労働同一賃金の考え方が導入され、正社員と非正規労働者の間にある賃金格差問題の解決策としています。
一方、一人ひとりが夫々に QOL “Quality of Life” を求める社会にあっては、大量生産・大量消費の時代における “大衆が同じ様な嗜好で同一規格の商品を消費する” と考えることはできません。これからの社会においては、顧客に接する一人ひとりが、顧客の一人ひとりの状況や嗜好に合わせて、どの様な商品をどうやって提供すれば良いかを洞察し、顧客と協創して提供すべき商品を生み出していかなければならないと言えます。
当然のことながら、その場の状況に合わせて臨機応変に知恵を絞り出して創意工夫していく作業(職務)を規定することはできません。すなわち、プリンシパル=エージェントモデルもモラルハザードといった考え方も、これからの社会においては定義されなければなりません。そして、この発想の転換から新たな社会モデルが創造されていきます。
- デジタル・トランスフォーメーションが進展していくこれからの時代にあって、富の分配の問題が深刻化していくと考えられます。プラットフォームを提供する人たちには富が集中し、それ以外の仕事に就く人たちとの経済格差は広がるばかりです。特に、定型的で人工知能や人工知能を装備したロボットに仕事を追われる人たちは貧困の生活水準に落ちるばかりとなります。人工知能や人工知能を装備したロボットを導入するには、経済合理性の追求の視点ばかりではなく、同時に人間を創造性のある業務に転換していくための政策を打っていかなければなりません。
- 大量生産の機械のひとつであるヒューマンリソースとして働くのではなく、また、自己利益を追求するばかりの経済人として働くのでもなく、今まさに、根本的に発想を転換して働くということそのものの意義から改革することが必要となってきています。
- 人口減少し経済規模が縮小していく日本の未来社会にあって、人に指図されて言われたことだけの仕事をこなしていくのではなく、少しでも多くの人が、自分らしい創造性を持った仕事の仕方ができれば、モチベーションが向上し、創意工夫された価値を多くの人に与えることもできるようになり、ひいては、一人当たりの生産性も向上していきます。
- 一人当たりの生産性が高まっていけば、様々な社会保障に対する原資を増やすこともでき、将来不安もなく安心して心豊かに暮らしていく社会を実現していくことがきる様になります。
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