レジリエンス、サステナビリティ
サステナビリティ(持続可能性)とレジリエンス(復元力)は、時として、同列に語られることがあるが、全く別の概念であると考えられる。確かに、復元力があれば持続可能であるとも言えるが、持続可能であるからといって復元力があるとは限らない。すなわち、持続可能性にとって復元力は必要であっても十分ではないのである。 復元力については、もう少し議論の余地がある。例えば、地球温暖化問題では、ある一定程度以上に南極や北極の氷が解けてしまうと、太陽光を反射する氷の面積が少なくなり過ぎ、逆に、太陽光を吸収する海面の面積が大きくなり過ぎて、地球温暖化の傾向を加速され、後戻りができなくなる(ティッピングポイント:臨界点)。そもそも、地球環境は多様な要素が複雑に絡み合いながら自然の中の調整機構が働き、多少の変化にも適応可能であり、復元力もあると思われる。そこに公転軌道の変動や地軸の変動といった要因が加わり、長期的な変化としての氷河期や間氷期を繰り返されてきたと考えられる。太陽は10億年で10%程度の割合で熱くなっていくという学説もあり、これによって温暖化が起きていると主張する人達もいる。 今、国や地域間の経済格差、富める者と貧困に喘ぐ者との経済格差は極端にひどく、しかも、地球上のあらゆるところに広く根深く浸透しつつある。失業して仕事につけない人達の不満、雇用機会の不平等に対する不満は社会不安となって蓄積していく。そして、こうした社会不安を引き起こした資本主義経済の仕組みでは、この問題を解決する術を持っていない。そして、政治が安定していない国々において、民衆の暴徒化、テロ、紛争が巻き起こると懸念される。しかし、それよりも問題視しなければならないことは、政治的に民主主義が定着している国においても、ソーシャルネットワークを利用して政治家が権力を握るために、ネット上のデータを分析して、民衆に受ける政策を並べ立てて得票を増やしていることである。その結果として、自国第一主義、保護主義が台頭し、世界中に調整の利かない分断の政策が実行に移されていくことであり、こうした社会の趨勢は、地球温暖化防止への国際的な活動をすら無視する様になることである。すなわち、民主主義のプロセスの中でこうた事態が起きているということに、人間の世界の中のどこかに、後戻りができなくなるティッピングポイント(臨界点)が存在するということが示されている。 国連は、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)として17の目標を定めて活動している。これは、世界規模で社会の持続可能な発展を意図した開発目標である。その中では、資本主義や民主主義の限界が生み出している様々なティッピングポイント(臨界点)の問題は取り扱われていない。人間の社会にも復元力は存在すると考えられるが、ティッピングポイント(臨界点)を越えてしまったら後戻りはできなくなり持続可能性は失われてしまう。今の人類として未来社会の持続可能な発展のために考えなければならないことは、ティッピングポイント(臨界点)がどこにあり、それを越えないために何をすべきかではないだろうか。
【認識すべき課題】 (時代背景、社会問題と背景要因)
- サステナブルという言葉は、1987年のブルントラント報告の中で “Sustainable development, which implies meeting the needs of the present without compromising the ability of future generations to meet their own needs” という『社会の持続可能な発展』という文脈で使われたのが最初と言われる。
- IOS26000(2010.11.1発行)においては、「地球の生態的制限の範囲内で生活し、未来の世代の人々が自らのニーズを満たす能力を危険にさらすことなく、社会のニーズを満たすことである」と定義された。
【未来における社会的価値の創造】
- 国連では2030年に向けての持続可能な開発計画(SDGs)を定めている。
- 2030年に向けて、グローバルにおいてはこのSDGsが目指していく方向性である。未来社会に向けた価値の創造もこのSDGsに沿って考えていくことが求められる。
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