人とロボットや人工知能が連携するクオリティの高い社会となる
イノベーションの究極の目的は何であろうか。おそらくそれは、心に思い描いている未来社会の発展の姿ではないだろうか。 近年の様々な分野での技術革新が融合してロボットや人工知能技術が人の知能を越える日が近いとも、ロボットや人工知能が人の仕事を奪うとも言われている。しかし、ロボットや人工知能技術によるイノベーションの究極の目的は、合理性の追求ではなく、人とロボットや人工知能が共生し連携することでクオリティの高い社会を構築していくことであろう。 クオリティの高い社会を構築していくためのイノベーションを興すには、巨額の開発費や広告宣伝費を集めて投資して一気に社会を変えていくというドミナントの発想ではなく、地道に一歩一歩、技術の進歩と社会の発展をなじませながら進めていくという発想の方が、未来社会の発展に役に立つものになるのではないだろうか。 イノベーションは新結合によって興るというが、“地道に一歩一歩、技術の進歩と社会の発展をなじませながら”というのは、まさに、新結合の不連続なつながりであろう。また、技術の進歩と社会をなじませながら進めていくというアプローチは時間軸の話しであって、新市場を創造するディスラプティブ・イノベーションによる造的破壊と矛盾するものではない。 これまでのイノベーションのいくつかは巨額の資金から生まれた軍事技術に由来するものである。しかし、これからのイノベーション、特に、日本人が興していくイノベーションは、平和な暮らしに供する民生技術に端を発した、未来社会を発展させていくという発想に基づいたものでなければならない。
【認識すべき課題】 (時代背景、社会問題と背景要因)
- IoT、ロボットや人工知能技術は、職場、及び、社会生活への適用の場を増やしつつある。その結果として、ロボットや人工知能が人の労働機会を奪うとも言われている。
- 日本においては、高齢化と少子化が進むことで人口減少社会となり、人手不足が社会問題となってきている。
- 世界においては、人口増大へと向かっている一方で、中国やインドなどの人口の多い国において人口オーナス社会化に向かっている。
- ロボットや人工知能技術が進化しシンギュラリティ(技術的特異点)に到達すると、未来社会がこれまでとは異なる次元に突入していくとも言われている。
- その一方で、日本の産業行政は、目の前の技術の枠組みに囚われるだけであり、例えば、インダストリー4.0などの発想を超えて、未来の技術を見据えた社会の発展に思いを至らせていない。
- 世界的に経済格差が拡大するだけでなく成熟経済化していく。地方政府は地域の利益を確保するために独立意識が高まり、大国同士も自国の利益ばかりを主張するようになっていく。
- 全体に対する個人主義の枠組みを超えて、人権が重視され個人が自立し自己の実現を求めて自律していく社会となる。
- これまでの教育は労働市場が求める人材の育成に偏っていた。また同様に、多くの企業研修のみならず、企業経営の考え方そのものも、高度経済成長期の成功モデルに根差したものに偏っていた。
- 日本人の生活も仕事を中心にまわしていくものに固定概念化されてきた。
【未来における社会的価値の創造】
- 人が担うべき仕事とロボットや人工知能が担うべき仕事の役割分担によって、人はより自分らしく自己実現に結びつく仕事、更には、自己を超越して他者や自然環境とも一体となり、社会の発展に結びつく仕事に集中できるようになる。
- 人に求められるのは創造的な仕事となる。それは、クリエイターばかりでなく、新たな仕組みを生み出す仕事だったり、繰り返されることのない新たな状況に対する判断だったりする。
- 人は時間や場所に拘束される仕事に追われる日々から解放されて、より時間的にゆとりのある生活を送くれるようにする。
- ロボットや人工知能が担うべき仕事の役割分担をすることで生産性が向上する。
- 経済合理性の発想によらず、ウェルビーイング、クオリティオブライフの発想に根差した産業への転換を図っていく。
- 看護ロボットや介護ロボットは看護や介護に携わる人たちの負荷軽減につながる。ペットロボットはペットを飼いえない人たちの心の安らぎとなる。家事ロボットは、家事に要する時間や労力を低減させて、自分のやりたいことの時間を生み出してくれる。対話ロボットは孤独を癒してくれるばかりでなく、独居者の異常を知らせてくれる。
- 仕事や家事、介護や看護に追われることなく、自分らしい、こんな暮らしがしたいという暮らし方を実現することができる。
- 人は、経済的豊かさや儲けを競うのではなく、自己実現を目指した生き方、心豊かな暮らし方ができ寛容な社会を築いていくための知恵を学習していく。
関連事項
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