人口減少社会にあって経済成長を続けていくためには、労働に携わる人口を増やし生産性を高める働き方への改革ではなく、組織の創造性(クリエイティビティ)を高めイノベーションを興していく働き方への改革が必要です。 そこで、当社では、競争戦略、パフォーマンス、プロセスのマネジメントと結びつけながら、組織能力および組織文化の変革へと深化させていく『“深” 働き方改革』のフレームワークを提供しています。
現在の働き方改革のフレームワーク
日本における働き方改革に関する政策の根源には、少子高齢化が進むことで2008年をピークに総人口が減少に転じ(厚生労働白書 平成28年版)、生産年齢人口の総人口における割合が低下して社会保障制度を支える仕組みの持続可能性を危うくしているという問題があると言われています。
そこで、出産し子育てをしている女性や定年退職した高齢者なども含めた多様な人たちが多様な働き方のできる労働環境を整えて、労働人口の増加を図ろうということになるのですが、本当に取り組んでいかなければならないことは、社会の変化に対してダイナミックに行動していく組織をデザインし創造性を高めていくことであり、そうしなければ日本の経済規模は縮小していくばかりとなってしまいます。ここで、これまでの働き方改革の主な論点を列挙すると以下の様になります。
- 雇用のダイバーシティ(女性の雇用、高齢者雇用、昇進機会の平等)
- 組織の中での一体性の形成
- 時間、場所に拘束されない働き方(テレワーク)
- 働き過ぎ防止(長時間労働削減、週休三日制等)
- 同一労働同一賃金
- ワーク・ライフ・バランス
- 育児休業制、介護休業
- 副業(複業)
- フリーランス
- 一人ひとりのニーズに合った人材育成、キャリアパス
現在の働き方改革の問題点
働き方改革というと、どうしても長時間残業がクローズアップされ、制度面の働き方改革がクローズアップされてしまいます。確かに、働き方改革への積極的に取り組むことで労働環境が改善されると、過重労働の問題は軽減され、職場で働く人たちの健康障害のリスクも軽減され、ひいては、働きやすい企業というイメージがついて優秀な人材が集まるという効果を生み出すことにつながります。
とは言うものの、働き方改革は、そんな外面的に制度を整えさえすれば良いということではありません。低いと言われている日本の企業の生産性向上にもつながるとも期待されていますが、働き方改革の本質は、有価証券報告書にあらわれる指標値の良し悪しではなく、また、効率の向上を図ることで利益率を高めさえすれば良いという問題でもありません。
当面のビジネスにおける働き方改革の目指すゴールは、競争力のある商品を提供する能力を身に着け、かつ、その企業の職に就いて働いていくことで未来に夢や希望を持てるようにすることでもあります。そうした取り組みこそが、雇用を増やし、デフレマインドの根底にある将来への不安を払拭して経済を再生させる効果的な手立てとなると考えられています。
しかし、成熟社会にあって、人口減少社会化が一段と進んでいくこれからの社会にとって本当に大事なことは、縮小していく日本社会の経済規模を大きくしていくことです。そして、そのためには、組織の生産性を高めていく以上に、組織のクリエイティビティを高めていくことが必要となります。
“深” 働き方改革
現代のオフィスワーカーは、情報技術を駆使することで、職場にいなくても資料を共有し、作成した書類を提出することができます。また、テレコミュニケーションにより遠隔での会議や打ち合わせも可能です。こうした個々の働き方を支える技術(モノの技術)はこれからも日進月歩で進歩していくことでしょう。制度面での働き方を改革していくことによって社会的システムも進化していきます。
しかし、職場で働く人たちや組織の能力を高め、組織の社会的風土を変容させていかなければ、組織のクリエイティビティを高めていくことにはつながっていきません。
そこで、当社では、働き方改革のフレームワークを発展させて、第1層から第5層に深化させていく働き方改革のフレームワーク、すなわち、『“深” 働き方改革』のフレームワークを提唱しています。
- 第1層は「組織は戦略に従う」という仮説に基づく、競争戦略の視点から見た働き方改革のフレームワークです。この詳細は 競争優位性を確立するための戦略一覧 をご参照下さい。
- 第2層は「見える化」という視点から見た働き方改革のフレームワークです。第3層はプロセス改革の視点から見た働き方改革のフレームワークです。これらは、従来の経済合理性に基づく働き方改革となります。第4層は組織能力を高めていくための働き方改革のフレームワークとなります。第5層は、組織風土を変容させていくための働き方改革のフレームワークです。第2層から第5層についての詳細は 組織問題の構造と組織変革に向けた戦略一覧 をご参照下さい。