イノベーションの究極の目的は何であろうか。おそらくそれは、心に思い描いている未来社会の発展の姿ではないだろうか。
近年の様々な分野での技術革新が融合してロボットや人工知能技術が人の知能を越える日が近いとも、ロボットや人工知能が人の仕事を奪うとも言われている。しかし、ロボットや人工知能技術によるイノベーションの究極の目的は、合理性の追求ではなく、人とロボットや人工知能が共生し連携することでクオリティの高い社会を構築していくことであろう。
クオリティの高い社会を構築していくためのイノベーションを興すには、巨額の開発費や広告宣伝費を集めて投資して一気に社会を変えていくというドミナントの発想ではなく、地道に一歩一歩、技術の進歩と社会の発展をなじませながら進めていくという発想の方が、未来社会の発展に役に立つものになるのではないだろうか。
イノベーションは新結合によって興るというが、“地道に一歩一歩、技術の進歩と社会の発展をなじませながら”というのは、まさに、新結合の不連続なつながりであろう。また、技術の進歩と社会をなじませながら進めていくというアプローチは時間軸の話しであって、新市場を創造するディスラプティブ・イノベーションによる造的破壊と矛盾するものではない。
これまでのイノベーションのいくつかは巨額の資金から生まれた軍事技術に由来するものである。しかし、これからのイノベーション、特に、日本人が興していくイノベーションは、平和な暮らしに供する民生技術に端を発した、未来社会を発展させていくという発想に基づいたものでなければならない。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一