- 社会や市場の変化に適合し得る力
- 将来を見据えた自分たちの生活や社会のあり方について、確固とした展望の実現を目指しつつ、経営環境の変化や市場の変化に対応するために、変化を受け入れ必要な柔軟性や適応力を持って対応していく能力
1.「変化適応力」の位置づけと構図
- 「変化適応力」は、ダイナミック・ケイパビリティの一つでもある「組織能力 “organizational capability」によって実現される能力です。
- 「変化適応力」は、「デサイシブ・ トランスフォーメーション・ケイパビリティ “DCXCS Decisive Transformation capability for sustainability”」である「企業力(社会的影響力)」「創造力(ソーシャル・イノベーション能力)」「変革力(社会変革力)」の基盤となる能力です。
- 「変化適応力」は、“Sestet Sharing Methods” により構築される能力 “Wise Communication Capability” である「目的を共有する能力」「思考(思考方法)を共有する能力」「直観(ビジネスセンス)を共有する能力」「変革を共有する能力」「実現を共有する能力」「情報を共有する能力」を礎として、企業の歴史の中で培われていく能力です。
これら能力は夫々に単独で機能するものではなく、「ケイパビリティ・ネットワーク・アンサンブル」としてお互いに協奏しながら実現されていくものです。
「変化適応力」は、①目の前にある現在のビジネスの短期的な収益等の成果を遥かに超えた視点で将来を見据えた自分たちの生活や社会のあり方について、②「未来構想力」や「構想実現力」を目指した確固とした展望の実現を目指しつつ、③経営環境の変化や市場の変化に対応するために、変化を受け入れ必要な柔軟性や適応力を持って対応していくものです。④そして、その結果は、「企業力(社会的影響力)」「創造力(ソーシャル・イノベーション能力)」「変革力(社会変革力)」に反映され、⑤「持続可能な社会を実現する企業価値創造」「長期的な視点から捉えた収益の拡大」に結実していくものです。
1.1.SPI “Sustainability Performance Indicator”
「変化適応力」は、社会を俯瞰して、人の求める権利(人権)や自然の権利を発展的に保護して、社会システム、経済システムの変革を通してサステナビリティが実現される社会を築き上げていくものです。
1.2.Sustainability Performance Indicator Management
「未来構想力」や「構想実現力」で描いて実現していく社会は、その企業に対して「社会への貢献(社会問題の解決)」「長期的に持続可能な収益の拡大」となって結実していくものですが、必ずしも、思い描いた通りには進まないものです。一方、経営環境の変化や市場の変化に対応する「変化適応力」は継続的な活動として展開していくものですが、その際、“Sustainability Performance Indicator Management” によって社会変革への挑戦の状況を管理し、必要に応じてフィードバックしていくことが必要になります。
こうしたフィードバックループを通して「企業力(社会的影響力)」「創造力(ソーシャル・イノベーション能力)」「変革力(社会変革力)」、「未来構想力」「構想実現力」「変化適応力」とその「ケイパビリティ・ネットワーク・アンサンブル」は成長していくことができます。
2.「変化適応力」のために具備すべき組織の能力と施策のチェックポイント
- 「変化適応力」の基盤
- 社会を俯瞰し長期的視点で物事に取り組むことを意識している。
- 企業の社会に存在する意義、事業が担っている社会的責任を重く捉えている。
- 社会に貢献することを使命として社会的価値を創造する企業であり続けている。
- 持続可能な社会の発展に資する社会的価値創造について知識を探索し深化させることが身に着いている。
- 組織内で新たなことに積極果敢に挑み切磋琢磨する文化が組織内に定着している。
- 生存者バイアス、正常性バイアス、現状維持バイアス、反カニバリゼーション意識を払拭している。
- 「変化適応力」のための施策
- 社会を俯瞰し、長期的な視点で事業を構想する習慣を組織に身に付ける。
- 社会に存在する意義、社会的責任に対する意識を組織内で語り続けて文化として浸透させる。
- 継続的に環境変化を捉え得る情報を収集して影響を分析し、即座に組織内にオープンに周知する仕組みを構築する。
- 持続可能な社会の発展に資する社会的価値創造の思想をステークホルダーと共有し、共特化するためのビジネスエコシステムをデザインする。
- 様々に想定されるリスクを評価し、顕在化する前に対策を打つ習慣を身に付ける。
- 自律して内発的に変化に適応するという気概の人を採用する。
- 自律して内発的に変化に適応することに対する評価制度をデザインし公正公平に評価する。
【補足】
ダイナミック・ケイパビリティ “Dynamic capability for sustainability”
- 企業の通常の活動をより高い利得を得る取り組みへと導くより高次の活動に関するものである。このケイパビリティは、急速に変化するビジネス環境に対処したり、環境を形づくるために、企業の資源をマネジメントしたり、オーケストレーションしたりすることを求める能力、あるいは、組織が意図的に資源ベースを創造、拡大、修正する能力である。(参考文献*1参照)
- ダイナミック・ケイパビリティとは、組織が意図的に資源ベースを創造、拡大、修正する能力である。(参考文献*3参照)
オーディナリー・ケイパビリティ “Ordinary capability for sustainability”
(1) ある環境下における独立した契約者を含む熟練した人材、(2) 設備や機器、(3) あらゆるサポート技術マニュアルも含むプロセスとルーティン、 (4) 仕事に必要な管理上の調整、 及び、(5)これらの組み合わせ(参考文献*2参照)
組織能力 “organizational capability for sustainability”
従業員である個々人が「組織」をなして相互に連携しながら協働して価値を創造していく能力、および、創造した知恵や知的財産
【参考文献】
- D.J.ティース, 菊澤研宗,橋本倫明,姜理恵、「D.J.ティース ダイナミック・ケイパビリティの企業理論」, 中央経済社, 2019.10 第3章 ダイナミック・ケイパビリティの解明 - 持続的企業のパフォーマンスの性質とミクロ的基礎 “Explicating Dynamic Capabilities: The Nature and Microfoundations of (Sustainable) Enterprise Performance 2007”
- D.J.ティース, 菊澤研宗,橋本倫明,姜理恵、「D.J.ティース ダイナミック・ケイパビリティの企業理論」, 中央経済社, 2019.10 第4章 ダイナミック・ケイパビリティ - ルーティン対企業家的活動 “Dynamic Capabilities versus Entrepreneurial Action 2012”
- C.ヘルファット,S.フィンケルスティーン,W.ミッチェル,M.ペトラフ,H.シン,D.J.ティース,S.ウィンター, 谷口和弘,蜂巣旭,川西章弘、「ダイナミック・ケイパビリティ 組織の戦略変化」, 勁草書房, 2010.3 第1章 ダイナミック・ケイパビリティの基礎