1.フォーサイトの意味すること
フォーサイトの意味は、一般に「先見の明」と訳されています。『先見』は「先のことを見通すこと」であり、『明』とは「物事の道理を見通す力」(精選版 日本国語大辞典)です。ここでは、フォーサイトを「先のことを道理をもって見通すこと」と解釈することにします。
フォーサイトは、目の前にあるものに対するものでもなく、ネットワーク上にあるバーチャルに描き出されたものも含め、「今は存在しないものについてのこと」です。
1.1. フォーサイトではないこと
フォーサイトをイメージすることは難しいかも知れません。そこで、上記のフォーサイトの定義から、ビジネスにおいてフォーサイトではないものを以下に列挙してみます。
- 予感、予想、予測ではない(これらは必要条件であるけれども十分条件ではない)
- 既存事業の維持、成功体験ではない
- 知識ではない (形式知ではなく、目の前にあることへの暗黙知でもない)
2.サステナビリティとフォーサイト
現在、企業に対して「サステナビリティ」を意識した経営が求められていますが、この文脈において理解しておかなければならないことは、企業は「持続可能な社会の発展」に資する行動をとるように意識しなければならないということです。
ここには「未来への時間軸」と「社会という広がりの軸」が含まれています。「未来への時間軸」で言うと、企業では、一般的に、3ヵ年計画や5ヵ年計画といった中長期計画を策定していますが、この中長期的視点を超えたもっと長期の視点が必要となります。「社会という広がりの軸」については、企業が見ているステークホルダーへの視点のみならず、さらに、社会に視座を高めた「社会を俯瞰した思考」が必要になります。
3.ビジネス・フォーサイトの構図
漠然とフォーサイトを考えてもビジネスでは使えません。そこで、当社では、ビジネス・フォーサイトの構図を下図のように定めています。
3.1. ビジネス・フォーサイトであることの条件
[社会の趨勢]は、現時点で捉えられている事実に基づいて推測される社会の動向です。これは目の前で起きていることの動き(傾向とその強さ)をデータとして捉えたものです。社会の趨勢を上記「フォーサイトではないこと」として漫然と捉えていたり、短期的に対処しようとしたりするならば、フォーサイトには結びつきません。そこで[論理的思考(洞察)]を加えて[社会発展の方向性]を読み取って[社会的価値の定義]を行うならば、そこには[フォーサイト(先のことを道理をもって見通す力)]が働いていることになります。
逆に言えば、フォーサイトとは、[社会の趨勢]から[社会発展の方向性][社会的価値の定義」「社会的機能の定義]を構想する能力であると言うことができます。
3.2. 社会発展の方向性、社会的価値、社会的機能のつながり
社会発展の方向性は、公式には白書や様々な書籍にも書かれていることかも知れません。しかし、企業経営にとって大事なことは「自らの意志で描かれている」ことです。そこに[社会的価値]が埋め込まれ、果たすべき[社会的機能]が導き出されてくるのです。このつながりによって[社会的機能]は社会に対して「企業として果たすべき役割」となり、それが[社会の中での存在意義]へと結びついていくのです。
3.3. パーパス経営との関係
最近、パーパス経営を掲げている企業を多く見かけます。しかし、経営理念(規範)の延長線上に「企業の存在意義」が示されているだけでは意味がありません。「企業の存在意義」は[社会の趨勢-社会発展の方向性-社会的価値の定義-社会的機能の定義]によって「企業として果たすべき役割-社会の中での存在意義]と結びついて初めてその意味を理解することが可能になります。フォーサイトは企業経営にとって必要な能力と言えるのです。
4.社会の趨勢、社会発展の方向性、社会的価値、社会的機能の具体化の支援
当社ではトランスフォーメーション戦略の構想に関わり、[社会の趨勢]の7分類23類型、[社会発展の方向性]の6分類20類型を標準モデルとして定義していますので、ここから[社会的価値][社会的機能]を導き出していくことになります。