「自立するということ」と「自律するということ」

「自立」と「自律」の定義は本コラム末尾の【参考情報】をご参照下さい。一方、ここでは「自立するということ」と「自律するということ」について、もう少し掘り下げて考えることにします。

  • 「自立」には、経済的自立もありますし、基本的人権が確保されて一人の意志を持った人間としての自立もあります(社会的自立)。また、様々な疎外感から解放されて、自分自身の価値観の下で自由に行動することができていることとも考えられます(精神的自立)。
  • 「自律」はその自立の上に立って、自らの規範に従って行動することとも言えます(自己規範に基づく自律)。ただ、自らの規範と言っても、倫理や課せられた社会的義務は果たさなければなりません(社会的責任と倫理に基づく自律)。また、他者の尊厳を尊重し、相手の意見に耳を傾けて敬意を表して思考することも必要です(他者の尊厳を重んじて行動する自律)。

「自立」と「自律」は対立する概念でもなく、また、補完的な概念でもなく、共存して意味をなす概念と言えます。

社会の自立と自律

この考え方を拡張すると、「社会の自立と自律」は、例えば、国家の運営、地方自治体の運営、さらには、企業の運営、コミュニティの運営にも適用することができます。「自立した社会」は外部依存を最小限に抑え、「自律的な社会」は倫理的かつ責任を持って行動することができるため、両者が共存することで、社会は内外の課題に対処し、持続可能な発展を遂げることができます。「社会の自立と自律」は、持続可能で健全な社会を実現するための重要な概念であると考えられます。

組織における「自立と自律」

「自立」と「自律」という言葉には多義性があり、一概に定義することはできません。
そこで、当社では、①経済的に自立し、②様々な権利(人権)がその人に確保されて、③個人の自由意志が形成され認識されて初めて「自立」と言えると定義します。そして、こうした自立した個人が、④内発的に意見を表明し、⑤他者に対して提案し、⑥お互いの意見の相違を受け容れて、⑦自ら調整して実現していけるようになるのが「自律」していることの定義としています。

【参考情報】

「自立」とは、精選版 日本国語大辞典(コトバンク)によれば『 他への従属から離れてひとりだちすること。一本立ち。 他の力をかりることなく、また他に従属することなしに存続すること。(抜粋)』とあります。また、「自律」とは、同様に、精選版 日本国語大辞典(コトバンク)によれば『 自分で自分の行ないを規制すること。外部からの力にしばられないで、自分の立てた規範に従って行動すること。(抜粋)』とあります。