日本の人口構成をマクロに見れば、少子化、新生児の減少、超高齢化、人口減少、都市部(特に、首都圏)への人口集中、地方の過疎化、限界集落化(都市、地方ともに)、空き家の急増、シャッター通りの急増、生産年齢人口の総人口における比率の低下といった傾向が続いている。また、従来の通信販売に加えてEC(ネット販売)やC2C(個人の中古品販売)等の社会への浸透により小口配送のニーズが急増し、配送業務における人手不足感が高まっている。
人手不足の傾向は、輸配送業に限ったことではなく、多くの業種で有効求人倍率、新卒の求人倍率が高い水準で推移していることにも表れている。この背景には、緩やかなりに戦後最長の経済成長を挙げることもでき、景気の浮沈にも影響を受けて生じる傾向でもあると言える。
ロボットや人工知能技術の進歩により職が失われるという懸念も広がっている。特に、完全にロボットや人工知能に置き換えることができるマニュアルに沿った定型的な業務に携わる人の職は失われると思われる。輸配送事業におけるバックヤードでは業務改革により、既に、無人化が進んでいる。一方、顧客にモノを届けるフロント業務は重労働であるだけでなく再配達等もあり無人化は難しい。この業務で、人の労力を軽減するロボットが作られれば、こうした分野に携わる人の数も増えてこよう。
中国の輸配送業では、顧客から委託された物品を放り投げて仕分けをしたり、路地に並べて顧客に受け取りに来させたりといったことが日常的に行われている。中国の人口は2017年で約14億人であり、経済成長率も高水準を維持しており、輸配送業務の品質に拘っている状況ではないかも知れず、景気が沈静化してくれば業務品質も高くなり安定してくると思われる。翻って、日本の輸配送業務が、いくら人手不足とは言え、業務品質の劣化に向かうとは思えない。
人口の変動は長期的な流れであるが、景気の変動、地域の特性、消費の特性、購買行動の変化に応じたきめ細かい対応が必要である。ロボットや人工知能技術の導入も、ただ単に新技術だから飛びつくというのではなく、長期的傾向、短期的変動を捉えた導入の仕方を考えて進めていかなければならない。そもそも、こうした業務への導入は、人工知能の流行の度に有効性が検討され実現してこなかったという過去の歴史も踏まえておくべきであろう。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一