個性こそが多様性である。多様性が重視されるということは、自己の個性を受け容れ、他者の個性を受け容れることから始まる。そして、夫々の価値観や知識を主張しあうのではなく、また、コンセンサスやネゴシエーションや忖度ということでもなく、お互いの意志を尊重しながら、より良い結論を導き出していこうという相互の心遣いのある対話によって一体性が醸成されていく。このより良い結論を導き出していこうという相互の心遣いのある対話こそがコミュニケーションである。コミュニケーションが成り立つには、共通する知識や共感する思いと言った基盤が必要である。組織の中には最初からそうした基盤がある訳ではなく、組織心理学で言われるイナクトメントを通した意味形成の過程も必要である。
21世紀の社会は、ソーシャルネットワークが発達した社会であり、いつでも、どこでも、誰とでもつながり合っていくことができる社会である。しかし、そうした技術が、真の意味でのコミュニケーション、すなわち、より良い結論を導き出していこうという相互の心遣いのある対話を実現化する訳ではない。むしろ、短い文章で自己を主張し合うだけの言葉のやり取りしかできない文化を社会に根付かせ、コミュニケーションのできない人を育てることにもなってしまう。
未来社会の持続可能な発展のためには、技術革新による利便性の追求も必要であるが、人々が互いにコミュニケーションを図れる文化を醸成していくことの方が重要である。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一