組織の持つダイナミズムとは何かと言えば、それは、社会環境の変化に対して組織が即応して、その組織が描いているビジョンを一人ひとりが相互に連携しながら実現させていく能力であると言える。それは、また、新たな社会の変化に対する組織学習能力であり、ビジネスエコシステムの構築も含めた自己組織化能力でもあるとも言える。ここで、広辞苑第六版によれば、ダイナミズムとは、「活力。迫力。力強さ。」と定義されている。
イノベーションは社会の変化を伴う現象であり、イノベーションを興していく過程では、社会環境の変化に相乗的しながら即応していかなければならない。そこでは、社会システムの変化を理解し、組織が、ダイナミックなシステムとして機能していくことが求められる。そのためには、組織全体としてビジョンの実現のために何ができていなければならないかを、組織にいる一人ひとりが夫々の立場に応じて自ら理解し、社会の変化に即応して相互の行動と調和をとりながら自律して行動していかなければならない。
外見的には、組織のダイナミズムは、組織のリーダーが環境変化に応じて即座に意思決定し、組織全体として統率のとれた行動によってビジョンを達成していく姿として捉えられると考えられる。しかし、社会の在り様を一変させうる能力を持ったリーダーの存在も必要であるが、社会における価値観が多様化し目まぐるしく変化している社会にあっては、リーダーの独断でものごとを動かしていくことには危うさもある。むしろ、組織の一人ひとりが目的を理解し、環境変化に即して、相互に連携を取りながら自律的に行動することで、組織全体としての目的を達成していく姿の方が現実的である。この場合のリーダーの役割は、経営資源の適正な調達と配置、および、組織内で生じるコンフリクトの調整ということになる。
ビジョンそのものは、組織内で共感され共有されている。しかし、社会の変化に応じて、ある時点で実現させていかなければならないことの当面の目的自体、あるいは、戦略自体を変更することが必要になる。リーダーは組織の一人ひとりが持つ多様な考え方を拾い上げて集約し、全体としての意思統一を図っていく役割を担っている。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一