#105 社会の発展へとつながる知性の進化とイノベーション

 広辞苑第六版によれば、知性とは「頭脳の知的な働き。知覚をもととしてそれを認識にまで作りあげる心的機能」と定義されている。事業を考える際の事象を捉える思考(既に起きている事象についての客観的データからの思考)であれ、経験や知識に基づく思考であれ、そこには知性が存在する。データを科学的に分析する思考、暗黙知と形式知の間でのスパイラルによる経済的な合理性を追求する思考、顧客の潜在的なニーズを洞察して付加価値を提供する思考、社会通念や社会における共通の認識(社会文化、常識、潜在的にある良識)に基づく思考の全てに知性が働く。
 事象や経験・知識は過去に起きたことの積み重ねであり、社会通念や共通の認識は過去から積み重ねられてきた、さらに、今ここにある空間に漂っている空気みたいなものである。この範囲の思考から新たな事業の創造や変革といったものが見えてくる。一方、実体がなく事象もおきていない未来についてどんなに思いを巡らせても、何も明らかにならない。しかし、過去は変えられないが、未来は築いていくことができる。
 事象や経験・知識、目に見えないことへの洞察、社会発展に向けた大義の上に“社会の将来を見据えた思考”が存在する。社会の将来を見据えた思考は、すなわち、未来社会の創造であり、社会の将来を見据えた思考によってイノベーションを興し、社会の将来を見据えた思考を実現化していくことができる。
 “社会の将来を見据えた思考”こそが、真に求められるべき知性である。現実の世界で起きている事象に囚われて、自分の利害や競争に勝つことばかり思考していても、結局、社会全体としては経済格差が広がり不平等を生み出すだけである。利権争いや権力闘争は社会の疲弊につながる。自己保身や既得権益に固執する風潮は社会の活力を削いでしまう。社会の将来を見据えて、社会の発展を考える思考が何よりも必要であり、そこに真に求められるべき知性を働かせていかなければならない。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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