#98 真のイノベーションには “未来社会に向けたブレないビジョン” がなければならない

 イノベーションは、一朝一夕に起こしうる現象ではない。 もちろん、ある瞬間に起きたひらめきがきっかけになることもあるが、社会の変革につながっていくためには、技術革新も必要であり、また、それを生活の道具として使いこなすだけのリテラシーが必要であり、そして、なによりも社会に普及し文化として浸透していく過程が必要である。
 そのため、イノベーションを起こす人は、未来社会を技術的に予見するだけでなく、それによって巻き起こるだろう様々な社会現象も想定し、制度設計も含めた社会の整備にまで思いを馳せなければならない。社会システムのデザイン能力が求められるのである。
 今、AIやそれを搭載したロボットが脚光を浴びている。これら技術開発に携わっている人たちの多くは、未来社会に向けたビジョンを持っている。しかし、その実現には、思考をとことん深めて、多くの挫折を乗り越え、様々な紆余曲折を乗り越えていかなければならないだろうと想像される。そこでは、多大な努力と膨大な時間を注ぎ込み続けていく “未来社会に向けたブレないビジョン” が試される。
 産業構造改革には、社会変革が伴わなければならない。経済成長のための政策を構想しようとすると、どうしても具体的な成果に結びつく表面的な議論に陥ってしまう。世の中には、新しい技術を使って、目の前の儲けを追求しさえすればよいと考える人もいる。そこで、表面的な成果を追求する取り組みと、“真の未来社会にとっての価値を創造し得るイノベーション” を巻き起こす取り組みとを見極める必要性が生じてくる。
 心眼を持って未来社会にとって真に価値があるものを創造していこうという取り組みには、必ず、“未来社会に向けたブレないビジョン” が含まれている。この、“未来社会に向けたブレないビジョン” こそが真にイノベーションを巻き起こし得る条件であり、それと同時に、イノベーションを巻き起こし得るかどうかを見極める指標となる。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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