私達の暮らしの中のストーリーは “今” というコンテクストの中だけで存在するものではありません。所帯を持って独立しても、夫婦のどちらも相方の家族との結びつきの中で暮らさなければなりません。お盆や正月に実家に帰って親孝行したり、親も孫が来てくれるのを楽しみにしていたりします。
日々の暮らしに、夫婦がお互いに相方の両親が暮らしてきた時代や地域の色を背負って来ているものもあります。 そして、その両親の夫々の親達の暮らしてきた時代や地域の色にも関わり合いが出てきます。正月のおせち料理やお雑煮の作り方で夫婦げんかをしたりもします。
下図は、そうした暮らしの中にある過去や地域との結びつきを模式的に描いたものです。
ここで大事なことは、私達の暮らしの中のストーリーを描くテクノロジーとして、 今現在の暮らしの中のエスノグラフィーだけを考えていては不充分であるということです。両親やその両親の生きた時代や地域というものを含めて、その関わりの中で暮らしを考えていくことが必要であるとも言えましょう。
こうして考えていくと、過去とのつながりばかりを考えてしまうかも知れません。しかし、この流れのを引き延ばして、私達の子どもや孫の生きる時代や地域を考えてみることも大事です。未来が今の暮らしの中のストーリーを規定してもいます。そして、こうした過去から現在、現在から未来へのつながりで考えることこそが真に “私達の暮らしの中のストーリーを描くテクノロジー” と言うことができます。