#78 AI(人工知能)をサステナブル経営に活かす (18) 創造した施策の価値分析

 策定する施策にとって重要なことは、社会的価値を創造するという視点から、顧客が「何を期待しどれほど切実に求めているか」といった価値があるかということです。
 そこで、施策の価値を分析するプロセスを設けて、選択しうる全ての手立てを一つのテーブルに載せて、表面的な判断ではなく、ものごとの奥深くまで掘り下げ、様々な視点から評価しなければなりません。ここでは、もう少しブレークダウンしてみることにします。

 価値分析とは、問題や課題の社会に対する影響度や解決に対する期待度、緊急度(優先的に取り組むべき問題や課題)、及び、事業として取り組む価値(コーポレートブランディングとしての価値、コストパフォーマンス、技術的に解決しなければならない課題を乗り越える障壁の高さ)が整合し、バランスするかの客観的な分析です。

 価値分析結果は下図の様なイメージとなります。単純に○印や大中小の記載に簡略化していますが、実際には、 目的の深層分析 や顧客ニーズの深層分析、伝統的な戦略策定手法であるPPM、SWOT 分析やVRIO分析、社会視点での STP(Segmentation、Targeting、Positioning)分析の結果等を引用した総合的な評価となります。
 

 
 以下に、各評価項目について、人口問題、エネルギー問題、食料問題、医療・介護等に視野を広げた、想定しうる具体的な項目例を幾つか列挙します。これらは、定量的に把握できるものもあれば、5段階評価等による数量化が必要なものもあり、渾然一体となっています。

[影響度]
社会の変革
人口動態への影響(出産・子育てに優しい社会)、暮らし方(ライフスタイル、消費生活)の変化、働き方の変化、安全・安心への意識の変化
産業構造の変革
大資本による大量生産型事業からベンチャーによるイノベーション型事業へ、都市から地方へ、サービス社会化へ、若者需要から高齢者需要へ
行動の変革
働き方の変革、購買行動の変革

[期待度]
経済的効果
地域の経済成長率、市場成長率、顧客企業の成長率、雇用の創出
資源
エコロジー(節電、創電、蓄電)、節水、食料資源の廃棄損削減、廃棄物の削減とリサイクル社会化
効率化とコスト削減
顧客企業の業務効率向上、顧客企業のコスト構造の変革
自動化等の技術革新による新事業の実現
社会資本に関わる効率化とコスト削減
暮らし(ゆとりある消費生活の創造)
家計(節約、不要な出費の縮減)、暮らしの安全と安心の確保、出産・子育のできる時間的・経済的余裕の創出、教育への投資、余暇の過ごし方の質的向上(観光、娯楽、文化活動、スポーツ等に関する出費の増大(出費できる経済的余裕の創出))
資産価値の向上
転売の評価額の向上、担保価値の向上

[緊急度]
社会問題の将来予想値
高齢化率、少子化率、人口減少率、食料自給率
貧困
不安定な雇用形態、経済的格差の増大、貧困の連鎖、貧困がもたらす教育格差
社会保障
社会保障費の負担増大(人口オーナス社会の進展、医療費の増大、介護費の増大)、経済弱者の増加と生活保護
地域社会の崩壊
過疎化(地方、都市)、空き家の増加、シャッター街の増加、買い物難民の増加、地域医療の崩壊

[戦略的価値]
ブランディング
企業としてのブランド価値創造、事業としてのブランド価値創造
商品戦略
商品ライフサイクル、商品品揃え、商品シェア
価格戦略
市場価格、値頃感
販売チャネル戦略
チャネルシェア、チャネルロイヤルティ、販売チャネルのブランド創造(シナジー)
顧客戦略
顧客ロイヤルティの創造、地域に暮らす人達のライフスタイルとの整合、エリア別人口動態(世帯数、家族構成、年齢別人口、昼間人口、夜間人口、収入)との整合

[事業との整合]
事業規模
事業への投資額、売上高、利益額/利益率、コスト、在庫投資額、人件費)、人材(人数、スキル)
投資回収率
ROA/ROE 等

[障壁(課題)]
資金力
事業への投資額、資本コスト
人的資源
人手不足(人件費の高騰)
技術力
研究開発費、技術開発に要する価格(新技術購買価格、特許使用料)
ビジネスモデル
ビジネスモデル構築費用、チャネルを惹きつけるビジネスメリット

 これらは、最終的には、「社会的価値創造の労働生産性を高めることにつなげていく」という視点から評価されねければなりません。
 尚、事業として戦略を構想していくためには、経済モデルとして確立されてきた 5-Forces分析による評価やVRIO (Value (経済価値)、Rarity (希少性) 、Inimitability (模倣困難性) 、Organization(組織))分析による評価等も必要であると考えられます。

※[経営][意思決定]等は[思考]という視点で捉えているという意味を持たせて、[ ]をつけて記しています。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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