自社の商品を、いつ、どこで、どんな顧客が、どれくらい買っているか、例えば、“この顧客層はこの商品をこれだけ買っている”を分析するのは最も初歩的な分析段階として常識化している。併買(色々な商品を同じバスケットに入れて一緒に買う)の分析、RFM分析(Recency、FrequencyMはMonetary)も今では常識化している。当然のことながら、この分析においては、クレジットカードやポイントカードの使用で顧客のプロフィールを知る貴重な情報源となっている。
ビッグデータの時代、交通機関の改札での入出情報、GPSの普及で捉えられる顧客の動きも、いつ、どこの売り場で、どんな品揃えをして、棚割するか、時間帯の値引きをするかなども精度良く分析できるようになってきた。
しかし、こうしたこれまでの手法にはいくつかの盲点がある。
・天候の変動等は売り場の勘に頼っている
・近隣のイベントなどの情報を捉えていない
・そもそも、潜在顧客(そこに住んでいて買い物していない人達)を捉えていない
・そこに住んでいて買い物していない人達はどんなことを望んでいるのか
最近は、オープンデータ(公的機関が収集し情報開示したデータ、例えば、国勢調査情報、家計調査等)を利用すれば、そこに住んでいる人達の人口動態、どんな買い物に支出しているかぐらいは分かるようになっている。大事なことは、これらを如何に組み合わせて、顧客の生き方(ライフスタイル)をイメージできるかであろう。
そし、これまで捉えてきた売上情報と重ね合わせれば、かなりの精度で顧客がどこにういるかを見つけることができるようになる。
メーカー側の人は商品に込めた思いで顧客をイメージしてしまいがちである。流通業者は売らんがための見方で顧客を捉えてしまう。しかし、そうした視点から顧客を捉えていては、顧客を見つけ出すことはできない。
顧客の“これを実現したい”“こうなりたい”といったニーズの背景には、必ず、ストーリーがある。社会との関わりや環境との関わりへの思いもある。カスタマージャーニーという手法もあるが、行動を捉えるばかりでなく、顧客のライフスタイル、更には、日々の暮らし方の中でのストーリーに共感し追体験することにより、自分だったらこうするといった仮説(アブダクション)を立てて、顧客の心情を洞察し見透すことではじめて、顧客の奥底にある存在 “こうありたい” を見いだすことが可能となる。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役 池邊純一