当社では、2020年よりサステナビリティ社会へのイノベーション(社会変革イノベーション)を構想する思考モデル “Innovation Transforming” の実現化に取り組んで参りました。
2年程前の ChatGPT をきっかけとして、生成AIが爆発的に普及し、また今年は、 AIエージェント元年とも言われる新たな潮流が巻き起こってきています。当社でも、社会変革イノベーションの思考モデルにこうした新たな技術を取り入れて「顧客インサイトの深掘り ⇒ バリュー・プロポジション(価値提案)の推奨」を行うエージェント機能を持ったAIシステム “Insight Engine” を開発することに致しました。
1.エージェント機能を持ったAIシステム “Insight Engine” の仕組み
当社は、システム開発の発想を超えて、サステナビリティ、経営学、社会学、哲学の知識を学び形式知化したコンテンツ 「未来への歴史 “History to Future” コラム」があり、また、その記事作成のために ChatGPT4o を使い込んできました。
“Insight Engine” の仕組みは下図のように、形式知化したコンテンツを体系的に整理して作成した「独自に開発した学習データ」、および、膨大な量の対話記録を持った「ChatGPT4o との対話空間」をバックボーンとして、ケースを読み込ませることにより当社が定義したシナリオに沿って ChatGPT4o が分析を進めて回答をする仕組みとなっています。
- 顧客及び消費者インサイトの分析と評価
- バリュー・プロポジションの作成
- 掘り下げていく論点、準拠する理論の抽出
なお、当社では、既存の事例を積み重ねて帰納的推論するのではなく、どの業種・業界にも適用できるメタ化した形式知で「独自に開発した学習データ」を作成していますので、読み込ませるケースは、例えば「〇〇業向け」というのではなく、幅広い業種・業界の様々なケースに対応することができます。

なお、当社では、カスタマ・インサイト(顧客インサイト)、コンシューマ・インサイト(消費者インサイト)を以下のように定義して区別しています。
- カスタマ・インサイト(顧客インサイト):顧客自身の心の内に隠されている叶えたいこと
- コンシューマ・インサイト(消費者インサイト):顧客インサイトを叶えるべくバリュー・プロポジションをする「企業の視点から捉えた顧客インサイト」へのインサイト
2.ケーススタディ
“Insight Engine” の実力を試すために「水産加工販売会社」「家庭用家具製造販売事業社」という全く異なる業界のケースを想定し読み込ませて回答させたものを下記ページに示します。
顧客インサイトを深掘りし価値提案をお薦めするAIシステム ケーススタディ
3.エージェント機能を持ったAIシステムとしての評価
今回、作成した学習データは 360レコードです。この学習データに基づいて、ChatGPT4o は、別に指定したシナリオに沿って、ケーススタディを進めて回答しました。
学習データの読み込みと解析には数分しかかかりません。また、ケース文を入力して回答をキャンバス上に書き込む時間も1、2分で終了しました。そもそも、アイデア出しには、閃きも必要ですが、様々なケースを総当たりに調べて、ストーリー性を見つけ出すには人の作業では限界があります。エージェント機能を持ったAIシステムは数分でやってのけます。また、隠し機能として、回答が気にくわなければ、再生成を何度でも繰り返すことができます。言わば、数限りなく回答を出し続けることも可能です。それは人間にはできないことです。
4.エージェント機能を持ったAIシステム “Insight Engine” 開発の展望
今回の「エージェント機能を持ったAIシステム “Insight Engine” 」は、2月11日から構想を開始し、第1版の学習データの開発(基本形)とその評価、2月13日から評価結果のフィードバックと第2版の学習データ開発とその評価、そして、2月24日に本日の内容までの完成し、2週間弱という期間で開発したものです。
しかし、学習データとしては不十分だと考えています。もっと、多様な視点で学習データを成長させていこうと考えています。また、「社会実装に向けて掘り下げていく論点」「準拠する理論」は、そこで終わりではありません。そこから先をどう深掘りしていくかも学習データに加えていく予定です。さらには、コンシューマ・インサイトを実現していく戦略構想にもつなげていかなければなりません。この点に関しては、当社の「未来への歴史 “History to Future” コラム」には形式知化した知識がたくさんありますので、それを活用して進めていこうと考えています。
本メルマガは弊社ホームページのコラム “未来への歴史” と連携して作成しています。 “未来への歴史” という名称は、サステナビリティの未来社会を思い描いて日々書き綴った記事を「思考の歴史として振り返ることができるようにしよう」と意図して命名したものです。
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