1.新しい社会の潮流
今、世界は地球温暖化による気候変動を目の当たりにしています。しかも、いつの間にか、後戻りできない臨界点(ティッピングポイント)を超えてしまったかのも知れません。
- 2023年の世界の平均気温が17.01℃に達し観測史上最高を記録した
- 海面上昇で海岸線が侵食されている地域が世界中で増えている
- 南極や北極の氷が解けて世界各地の氷河が縮小してきている
- 全世界的に豪雨による水害が頻発化し、かつ、激甚化している
- 世界の様々な地域の海でサンゴの大量白化が発生
- 世界の様々な地域で高温と乾燥で山火事が多発している
- 世界の様々な地域で干ばつが発生している(フランスの報道によるとナミビアでは生態系のキャパシティが低下し食肉用に700頭のゾウを殺処分している) 等
地球温暖化に加担しているという評判が立つのは好ましくありません。多くの企業は、脱炭素化に取り組んでいることを、開示基準に従った統合報告書によって情報公開しています。
2.虚ろ化(うつろ化)する社会の新潮流
しかし、このところの多くの人たちの地球温暖化に対する関心は虚ろ化(からっぽになる、むなしくなる)しているように思えます。サステナビリティへの関心は、踊り場に差しかかっているのかも知れません。(もともと化石燃料の排出と地球温暖化と異常気象の因果性に懐疑的な人たちもいます)
- COP29(第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議)も、途上国に先進国が提供する資金の増額を巡り交渉が難航している(日本時間11月20日午前10時時点)
- 人々の関心は物価高対策や景気対策に向けられている
- 米国次期大統領も国内の石油を増産して石油価格を下げて物価高対策にしようとしている
- 世界のESG社債発行は減少している
- 欧米では洋上風力発電がインフレや人件費の高騰のために縮小してきている 等
3.身近な視点で不安の本質を捉え直して、意識を変える
そもそも、人というのは目の前の不安に流されるものます。ともすれば、2050年や2100年の海面上昇への不安は後回しにされます。
しかし、視点を変えて、地球温暖化の影響を「食」から見ると、身近で現実的な問題として見えてきます。令和の米騒動もその一つです。野菜の値段が高騰しているのもそうです。漁業の水揚げ量が激減したり、獲れる海域が変化したりしているのもそうです。コーヒーやチョコレートが値上がりしているのもそうです。いつしか、これらは高額な贅沢品になるのかも知れません。
食料自給率が低く、海外に多くの食材を依存している日本人にとって、「食」への影響は現に我が身に迫っている死活問題です。自分たちにも飢えが迫っていると思うなら、「食」の問題を、他人事ではなく、自分事として何とか解決しなければという気持ちになるでしょう。
4.「社会の奥底に潜む脆弱性」からのインサイト
地球温暖化の「食」への影響に晒されている日本人にとって、食料自給率が低いということは「私たちの命に関わる社会の脆弱性」です。
脱炭素化への取り組みを示さなければという動機では受け身になりがちです。茫洋としたシナリオではなく、身近に迫りくる問題に置き替えて、社会に潜む脆弱性を解決するという意識は、能動的で自律的な行動につながります。
「食」に限らず、「社会の奥底に潜む脆弱性」からのインサイトはトランスフォーメーションを巻き起こします。社会変革のトランスフォーメーションこそが企業価値の源泉です。
本メルマガは弊社ホームページのコラム “未来への歴史” をもとに作成しています。“未来への歴史” とは、サステナビリティの未来社会を思い描いて日々書き綴った記事を思考の系譜を歴史として振り返ることができるようにと意図したものです。
- 『「食」から見たこれからの時代の戦略モデル』の詳細は こちらのサイト をお読みください
- 『「食」から捉えたトランスフォーメーション(サステナビリティ社会への変革)』の詳細は こちらのサイト をお読みください
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サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一