#294 戦略眼と現実解 製品機能ではなく社会的機能でイノベーションを考える

社会的機能とは

私たちは「機能」という言葉を、通常、使用しているモノやサービスが実現しようとしている「使途の目的」「その目的を実現化するための作用(働き)」という意味で使っています。それは仕様として設計されたものです。

それでは「機能」に「社会的」がついた「社会的機能」とは何でしょうか? そこで、この言葉を辞書を調べてみると、『一定の状況のなかで,地位,役割体系としての社会システムが,みずからの維持,存続のためにその機能的要件を充足させようとする作用,働きのこと。』(小学館「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典」、コトバンクより検索)と書かれています。この定義によれば「社会的」という言葉を、「社会システムが,みずからの維持,存続のために」(目的)という意味合いで使っているようです。また、「自己組織化」(自己を構成する要素が自律的に相互に作用しあうことによって、全体として秩序ある構造を形成する)の意味を含んでいるようです。

「社会的価値の創造」を機能要件として「社会的機能」を定義する

当コラムでは、これからの時代においては、企業は「社会的価値」を創造していかなければならないと記してきました。当該コラムでの「社会的価値」は以下の通りです。

  • 社会の発展に結びつくこと。即ち、社会発展に還元される経済的価値、および、科学技術発展、文化発展、地域発展、組織変革、合理性の創造、安全安心の創造、仕事の創造、心豊かさの創造、良き人生の実現に向けた支援、人権の保護と深化、自然環境の保護・保全・育成(地球温暖化含む)、社会規範の発展と遵守、平和社会の構築などの経済的価値を超えた価値である。

企業は社会の中で活動している訳ですから、『その企業が存在する社会の中で、顧客、投資家や株主、サプライヤや販売チャネルとして協業する企業、従業員などと自律的に相互に作用しあうことによって「社会的価値」を創造していくこと』になります。これが辞書的定義に基づく、当社なりの「社会的機能」の定義ということになります。ここで、「社会的価値」を創造していくことが機能要件となります。

「社会的機能」の類型と構造

さて、事業の本業を社会的機能として見ると、その活動が「経済の発展」につながっていくことも社会的機能であるには違いありませんが、それが「社会の発展」もつながる(上記定義では「社会発展に還元される」)のが社会的機能としての考え方です。そのためには「雇用の創出」「従業員の教育(キャリア形成)」「経済的自立」も「社会的機能」に含まれてきます。ひいては、従業員が「自立し自律して働く環境の整備」も「社会的機能」に含まれてきます。

これらは「人権の保護」にも通底してきます。そして「個々人の幸福」(Well-beingやQuality of Life)の実現にもかかわってきます。また、さらには「自由」であること、「民主主義」であること、「平和」であることにもつながります。これは「社会の発展」を実現しようという「社会的機能」の類型でもあります。

このように「社会的機能」は、どの「機能」が「上位機能」であるということではなく、相互につながりあうことによって全体として実現される「機能」と言えます。まさに「自己組織化」によって形成されていく「機能」であると言えます。

「社会的価値」を創造するということは、こうした特性を持つ「社会的機能」を実現していくことに他なりません。

新たな「製品機能」を創り出すのではなく、「社会的機能」で「機能」を考えることによって、はじめて社会変革に資するイノベーション、すなわち、破壊的イノベーションを引き起こしていくことが可能になります。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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