先の当コラムでも指摘しましたように、「規模の経済」を基本原理とする「大量生産・大量販売・大量消費・大量廃棄」の経済モデルはこれまでの経済成長を牽引してきた反面、環境汚染や社会の分断という問題を引き起こしてきました。
そこで、当社では、前回の当コラム において「持続可能性の経済」を基本原理とする「多品種少量生産・経験価値の販売(提供)・経験価値の消費・少量廃棄」の経済モデルを提唱しました。
廃棄をしない消費社会における行動決定要因 「自立と自律」
「規模の経済」では、製品も消費も画一化することで効率化を図り経済合理性(コストダウン)を実現することになります。プロダクトアウトの発想で、生産・販売システムにとっての最適化が図られ、大衆(集団)としての消費者として画一化されるので、行動決定要因の社会的構造 は左下の象限に押し込められることになります。
「廃棄をしない消費社会化」ではパーソナルニーズへの心遣いが重視され、経験価値の提供に焦点があてられます。必然的に「持続可能性の経済」の行動決定要因の社会的構造 は、個々人の顧客に相対して、一人ひとりのアイデンティティの確立に意識が注がれる右上の象限に位置づけられます。この象限で重視されるのは「顧客一人ひとりの自立と自律」と同時に、相対する「価値を提供する側の一人ひとりの自立と自律」です。
「廃棄をしない社会化」の社会的価値
「廃棄をしない社会化」は、もちろんのこと、資源の節約、環境破壊の抑制という社会的価値の創造につながります。また、個々人の経験価値を得られるという感動の創造にもつながります。社会問題の解決につながるという経験価値という社会的価値にもつながります。
しかし、モノを廃棄せずに大切にして長く使うという暮らし方への変容は、社会問題に対する個々人の関心をひきつけ、その解決に自らも参画しているという意識にもつながります。モノを廃棄せずに大切にして長く使うという個々人の意識は、大量廃棄に関わり生じていた様々な社会コストの削減へとつながります。
「廃棄をしない社会化」の社会的価値の「真の意義」
超高齢社会、少子化社会、人口減少社会にあって、社会コストの削減は貴重です。地域社会が経済的に自立していくための原資をここから捻出することも可能となります。また、街おこしなどの活動にも活かすことができ、自らの文化を継承し育んでいくようになります。
「廃棄をしない社会化」は、将来世代に向けて、自立し自律した社会の創造、心豊かさのある社会づくりに生かしていくことができるのです。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一