当社では「社会の趨勢」を以下の7分類23類型に整理して捉えています。この趨勢は明るい未来に向かっているというよりも、現代社会の問題点を浮き彫りにしたものが多く、未来が暗いに方向に向かっていることを示しています。
- 地球温暖化問題：(1)炭素排出とエネルギー政策の転換、(2)再生可能エネルギーへのシフト、(3)激甚災害の多発化と広域化、(4)住環境の変化と健康への影響
- 人口変動と移民・難民問題：(5)人手不足/過疎化/財政逼迫/インフラの老朽化、(6)途上国の人口増大による失業率上昇/スラム化、(7)移民や難民の人権保護と治安問題
- 食料危機：(8)気候変動による農作物の不作、(9)人口増加による食料需要の増大、(10)経済成長による過剰利用（飽食化）/環境破壊
- 資源の偏在と不足（枯渇）：(11)資源配分の不均衡による経済的不平等化、(12)レアメタルの争奪による緊張の高まり
- 経済変動とグローバルシフト：(13)グローバルノースとグローバルサウスの経済格差/貿易不均衡、(14)産業移転にともなう産業構造の変化、(15)保護主義や経済ナショナリズムの台頭
- 社会の分断とポリティカルシフト：(16)文化的・民族的な対立による衝突、(17)政治的意見の極端化による政治の不安定化
- ディスラプションによる急激な社会の変化：(18)AI化/ロボット化による労働市場の構造変化、(19)デジタルデバイドによる社会格差/経済格差、(20)肖像権/著作権侵害等の倫理問題、(21)サイバー攻撃/ネット詐欺/個人情報や機密情報の漏洩/改ざん/フェイクや誹謗中傷の拡散、(22)監視カメラ普及による監視社会化とプライバシー侵害、(23)バイオテクノロジー利用の倫理的/社会的問題
先の当コラム「#279 戦略眼と現実化 社会発展の方向性から取り組むべき戦略の優先順を考える」で示した「社会発展の方向性」は、「社会の趨勢」を明るい未来に変えていこうという方向性にもなっています。
そこで、当社では、上記の「社会の趨勢」 (1)～(23) について「問題点」「課題」「解決策」「見通し」を分析した上で、「社会発展の方向性」 [1]～[20] との総当たりで目的関係分析を実施しました（分析にはChatGPTを使用しました）。ここで、目的関係分析は 、[1]～[20]の方向性を目的として、(1)～(23) の趨勢がどの程度の障害要因になるのか、あるいは、どの程度の促進要因になるのかという分析です。（「社会発展の方向性」 [1]～[20] の詳細は当コラム#279をご参照下さい）
下図上部は「社会発展の方向性」が、どの程度促進されうるのか（プラスの評価値）、あるいは、どの程度抑制されてしまうのか（マイナスの評価値）を示しています。また、下図下部は「社会の趨勢」が、どの程度促進しうるのか（プラスの評価）、あるいは、どの程度抑制してしまうのかを示しています。
上図を総括すると、以下の3点にまとめることができます。
- (1)炭素排出とエネルギー政策の転換、(2)再生可能エネルギーへのシフト、(18)AI化/ロボット化による労働市場の構造変化 といった地球温暖化問題への対応やAIやロボットなどのイノベーションが [15]脱省遮再生経済社会化、[16]環境配慮経済社会化、[17]脱地球資源争奪社会化 を強く促進している
- (6)途上国の人口増大による失業率上昇/スラム化、(10)経済成長による過剰利用（飽食化）/環境破壊、(15)保護主義や経済ナショナリズムの台頭、(16)文化的・民族的な対立による衝突、(17)政治的意見の極端化による政治の不安定化 といった経済的・政治的課題が社会発展（社会変容や暮らし方の変容）のボトルネックとなっている
- (3)激甚災害の多発化と広域化、(4)住環境の変化と健康への影響、(7)移民や難民の人権保護と治安問題、(23)バイオテクノロジー利用の倫理的/社会的問題といった人権や倫理に関わる社会の趨勢が [13]人権視点の経済社会化、[14]多様性と包摂の公正で寛容な社会化、[18]倫理と社会貢献の社会化につながっている
ここで大事なことは、「社会発展の方向性」だけを見て、どのように取り組んでいけば良いかを考えるのではなく、「社会の趨勢」を捉えた上で「社会発展の方向性」の実現に向けて戦略的に取り組みを考えていくということです。
その意味で、[13]人権視点の経済社会化、[14]多様性と包摂の公正で寛容な社会化、[15]脱省遮再生経済社会化、[16]環境配慮経済社会化、[17]脱地球資源争奪社会化、[18]倫理と社会貢献の社会化 への方向性を目指していくのが妥当であるという結論になります。
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一
『社会の趨勢』『社会発展の方向性』『「社会の趨勢」と「社会発展の方向性」の目的関係分析』についてご興味のある方は、こちらからお問い合わせください。