#273 戦略眼と現実解 意思決定プロセスの改革「先々のことを考える余裕がない」を変革する

 米国で景気後退が始まったのではないという警戒感が広がり、日本の東京市場でも、2024年8月2日の日経平均の終値が前日比で2,216円63銭安となり、値下げ幅は1987年10月20日に起きたブラックマンデーでの急落(3,836円安)に次ぐ歴代2番目の大きさとなりました。

 株式への投資家は、これ以上の値下がりを恐れて所有している株式の売りに走り、その一方で、底値のタイミングを見計らって上昇株を虎視眈々と狙っている投資家もいます。企業の経営者としては、景気の変動、企業の業績の浮き沈み、レピュテーションリスクに敏感な株式投資家の動きに敏感にならざるを得ません。

経営の実態

 ところで、企業の経営者の心情を推し量ると、①まず、事業のスタート時には、志に燃えて、何とか、イノベーションの死の谷を越えようと必死に努力するものです。②ようやく軌道に乗っても、それを維持拡大しようと模索が続きます。③色々な手立てを講じても、うまくいかなくなったときに、初心の志に戻ったり、周りや先々を見て事業を立て直そうとします。④事業の再編(リストラクチャリング)を断行して、再出発に意欲を燃やします。

 本コラムで繰り返し記してきました「創造的仕事を創造する社会になる」に目を向けるチャンスがあるのは、おそらく、③の時期における一瞬の時にしかないでしょう。それ以外は、いつも余裕がなく、目の前のことに集中しているばかりになるでしょう。まして、冒頭で記したように、景気変動の影響にも目を配り、敏感に反応しなければならないので、一瞬たりとも気を抜くことはできません。

意思決定プロセスの変革

 経営者に余裕がなくとも、誰かが戦略眼を持って経営者に進言しなければならないとするなら、それができるのは経営のスタッフ部門の人たちでしょう。

 経営者と経営のスタッフ部門の人たちは、社会の在り様や趨勢を俯瞰した問題意識、今起きている現象(データによる把握)、現象の理由付け、波及して生じるリスク、対処すべき経営課題を共有した上で、緊密にコミュニケーションを図って、いくつかの現実解(現実的な解決のためのモデルと将来への見通し)の候補を出し合い、長所短所等を比較評価しながら良い点を組み合わせてブラッシュアップし、意思決定をしてなければなりません。

 ここで言う「コミュニケーション」とは「現実解のすり合わせを通して、お互いに理解を深め合ったコミュニケーション」です。すり合わせのプロセスを経て意思疎通が図られ、組織全体として体系立てた戦略的な行動、かつ、個々人それぞれの自律した行動、が可能になります。

戦略眼を持った現実解を追求する

 大事なことは、現実解と戦略眼のバランスです。一瞬の時々に、戦略眼を持った現実解を追求することが、企業の発展を推し進めていくのです。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 池邊純一

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