#272 戦略眼とシナリオ バックキャスティングとロードマップ戦略

 「創造的仕事を創造する社会になる」と言われても、身近な感じはしないし、遠い先のこととか見果てぬ夢とかといった感じしかないというのが、短期視点に偏りがちで株主の利益に気遣う日本人の平均的な感覚だろうし、日本社会における一般的な風潮だと思います。

「創造的仕事を創造する」を再考する

 しかし、世界を見渡せば、今日の姿は、全て、社会の在り様を変える破壊的イノベーションによって作り上げられてきた姿です。科学技術も、交通システムも、通信システムも、都市システムも然りです。それらを支える、コンピュータシステム、ネットワークシステムも然りです。そして、現在のシステムの殆どは、半導体によって支えられています。

 破壊的イノベーションは、それを踏み台にして、次なる破壊的イノベーションを生み出していきます。私たちは、破壊的イノベーションによって、常に、創造的仕事に駆り立てられ、次なる創造的仕事を創造してきました。

プラットフォームとエコシステム

 今日、ビジネスを進める上で、プラットフォームとエコシステムという言葉をよく使います。私たちは、プラットフォーム(構造)とういう基盤の上で、エコシステム(機能)を自己形成しながら、ビジネスを展開しています。

 プラットフォーム(構造)という概念は、基盤や土台となるものなら何にでも適用されます。例えば、私たちは、技術基盤と言ったりもします。エコシステムは共通のビジネスルールを基盤として円滑に機能します。エコシステムを基盤としてビジネスが展開されます。これまでに起きた破壊的イノベーションを基盤として新たな破壊的イノベーションが起こされるとも言えます。

 エコシステムやプラットフォームという概念自体、次なる「創造的仕事を創造する社会」では過去のものになっているかも知れません。しかし、現時点で、私たちが利用可能な概念はエコシステムやプラットフォームであり、「創造的仕事を創造する社会」をイメージできる唯一の概念です。

私たちがなすべきは、プラットフォームやエコシステムの創造ではなく新たなパラダイムの構築である

 しかし、「創造的仕事を創造する」と「プラットフォームやエコシステムを創造する」を混同してはなりません。もちろん、プラットフォームやエコシステムを創造することにも大いなる意義はあります。しかし、モノコトとしてのプラットフォームやエコシステムを創造するだけの狭い捉え方では「創造的仕事を創造する」にはなりません。

 私たちは、エコシステムやプラットフォームを成り立たせているパラダイムをシフトさせること、すなわち、社会を変えうる次なるパラダイムを創造することにこそ傾注していかなければなりません。それが、現実的に私たちができる「創造的仕事を創造する」ということです。

 なお、パラダイムは、トーマス・クーンが提唱した、例えば、コペルニクス的転回で知られるように「天動説が地動説にパラダイムが転回した」などという使われ方をする概念です。「これまでの社会の在り様を決定づけていたことが変わり、社会の在り様がまったく変わってしまうこと」と、このコラムでは意味づけておきます。

バックキャスティングとロードマップ

 このようなセンス(直観的な思考)でビジネスを捉えていくのが「戦略眼」ですが、そこで描いた未来像は今時点の現実とはかけ離れたものかも知れません。しかし、見果てぬ夢でしかないと諦めていては未来は切り拓けません。いつまでに何を実現するか、目的とゴールを決めて、バックキャスティングでロードマップとグランドプランを作成し、ロードマップにしたがって年次の実行計画を策定し遂行していき、問題点を把握して解決方法を策定(モデル化してすり合わせ)してグランドプランにフィードバックしていく、これが未来を築いていくために、私たちが歩んでいくべき道なのです。

サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一

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