社会の中には「誰もが、実は、有ったらいいな」と思っているけど、どうイメージしたらよいかわからないために実現されていない、しかも、心の奥底に隠されていて見い出されていないものがたくさんあます。ここでは、そうしたものを潜在ニーズと呼ぶことにします。
この潜在ニーズを見つけ出す思考にはパターンがあります。いくつかの既存製品を並べて、どんなニーズを満たしているか共通する機能を列挙し、逆に、不満を感じている事柄を並べてみます。満足している共通機能と不満を感じている事柄を同時に実現しうるものが潜在ニーズとなります。これは、社会学者のロバート・キング・マートンやニクラス・ルーマンらが提唱した、機能、逆機能、機能的等価価値を導き出す方法論を参考にしたものです(上記は、そうした社会学の方法論を元に筆者が思考パターンとして記載したものです)。
気に入った音楽を何度でも繰り返し聞きたいというニーズを実現しているテープレコーダ。でも、いつでもどこでも聞けたらいいのに。持ち歩いて聞けたらいいのに。これを全て実現したのがソニーが販売している「ウォークマン」です。
離れた人と会話する(急いで連絡を取る)ことができる電話。でも、固定した場所に設置された電話機まで行かなければならない。必要になったその時その場面で会話することができない。これを実現したのが携帯電話です。
コンピュータは情報処理装置として使える。コンピュータはネットワークを介してつながっている。でも、それをカバンやポケットに入れて持ち運べない。調べたい情報をその必要になった時その場所で検索することはできない。思いついたことをその時その場で情報として多くの人に伝えて共有することはできない。声だけで、文章や写真や動画を情報として伝えられない。これを同時に実現したのがスマホです。
知りたいことを調べるのに使うのがキーワード検索です。でも、キーワードを選択して記述したり、目的とする答えを見つけ出すために組み合わせを考えたりするのは手間だ。そもそも日常使う文章で、その文脈で検索できないのは人間の習慣とは異なっている。これを同時に実現したのが生成AIです。
どうでしょうか、皆さんも、潜在ニーズを見つけ出したくはありませんか?
サステナブル・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長 池邊純一
- 佐藤俊樹、『社会学の方法:その歴史と構造 (叢書・現代社会学 5)』,ミネルヴァ書房, 2011.9.30