人間性を尊重しているか

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ここでは、“変化を受けとめて自ら行動するための環境づくりとその論点”について掘り下げ、変動要因として捉えていく。

“変化を受けとめて自ら行動するための環境”に特徴づけられる変動要因とその論点

“変化を受けとめて自ら行動するための環境”について掘り下げる上で、共通に認識しておかなければならない論点がある。

  • 社会、市場は、常に急速に多様に、変化している。どの企業も、生き残りをかけて少しでも早く、少しでも多くの知見を獲得し、他社との差別化を図って優位性を確保しようとしている。
  • ビジネス環境の変化に対して、今のままでも何とかなるだろうと何ら手を打たないまま放置してしまうと、やがては、抑制が効かないほどに大きな問題となって襲いかかってくる。

また、“変化を受けとめて自ら行動する”ことを阻害する要因があるとして、その背景には以下の理由が潜んでいると考えられる。

  • [出る杭は打たれる]
    • “差し出がましいことをすると、人から非難され、恨みを買ってしまうと思えば、何もしない方がましである。
  • [火中の栗を拾わない]
    • 自身の立場や利害損得がかかっていて、何もしなくても今のままが得なら何もしない。
  • [茹で蛙の法則]
    • 例え重大な変化であっても、変化が緩やかなうちは、安穏と過ごしていたい。


もし、人間性が尊重されていないとすれば、それはどういうことか

約束して成果を出しさえすれば良いという人間=機械論の発想である

  • “約束して成果を出しさえすれば良いという人間=機械論の発想である”とは
    • 成果主義において“コミットメント”が過度に重視された。結局、有言実行という言葉で約束を迫られた自らの“コミットメント”に縛られ、誰しもが、“約束して成果を出しさえすれば良い”ということになってしまった。
    • “約束して成果を出しさえすれば良いという人間=機械論の発想である”とは、そうした“コミットメント”を前提としたマネジメント手法を実現する道具である。
  • “約束して成果を出しさえすれば良いという人間=機械論の発想である” の論点(捉え方の軸と筋道)
    • “約束を守りさえすればよい”ことの問題と同様に、以下の問題が想定される。
      • 自分の範囲だけで問題を解決していれば済むなら、個人の能力を高めさえすれば良い。しかし、社会や市場の変化の兆候に対して、組織として先んじて対処していくためには、色々な専門を持つ人々が知恵を出し合い、発見されていない答えを見出していかなければならない。
      • “約束していないことでも、お互いに心遣いを持って”行動することが企業の付加価値となり、それが競争優位性となる。
      • 一人ひとりが“自分だけが成果をあげれば良い”と思って行動する企業は、競争優位となる価値を見出すことなく、勢いを失っていく。
  • “約束して成果を出しさえすれば良いという人間=機械論の発想である”理由
    • “他人の事には関心を持たない”ことの理由と同様に、以下の理由が考えられる。
      • 成果主義の導入によって、より高い目標を設定して高く評価をされようとし、自らの成果を達成することで精一杯になっている。また、不況が長引き、リストラ(人員削減)が常態化して人手不足となっている。そうした職場環境の下で、“約束を守りさえすればよい”という組織風土が醸成されてきた。
  • 成果を出した過程を高く評価する
    • 何故、成果を出した過程を高く評価するのか
      • “成果を出した過程を高く評価する”とは、約束した成果を出す過程に焦点を当てて、様々な悩みをどう解決し、また、その結果や影響についても共感し得るかどうかで評価することである。
      • 自分の失敗を人の責任になすりつけて、人の成功を自分の手柄にする人がいる。希な例かも知れないが、“成果を出しさえすれば良いという評価制度”にしてしまうと、こんな行為を是認し、見逃してしまう。だからこそ、成果を出した過程に焦点を当てて評価しなければならない。
    • 如何に、成果を出した過程を高く評価するか
      • 大事なことは、良い成果であれ、悪い成果であれ、その成果を得る過程で、社会や顧客のためにどうのように考えてニーズを満たし、課題を解決しようとしたかである。そして、組織内外の人達にとっても、組織の将来にとってもプラスになるように、どのような思想で貢献しようとしているのか、または、貢献しうるのかで評価することである。
      • 人間=機械論の発想を見直すためいには、人を評価する視点を、業績値や約束した結果(数値)をどれほど達成したかではなく、社会や顧客、組織にどのように貢献しようとしているか、特に、自分なりの具体的な考え方を持って行動しようとしているか、実際に行動したかどうか、その結果を顧客や関係者がどう評価しているか、皆が共感しているかどうかに重きを置くように変更することで実現できる。


成果を出すために困ったことがあれば言ってくれというマネジメント

  • “成果を出すために困ったことがあれば言ってくれというマネジメント”とは
    • 成果主義の下で横行しているマネジメントの手法である。しかし、これは自己責任を基調としたマネジメントであり、組織能力を高めるためのマネジメントととは言えない。上手な言い回しのパワハラでもある。
      • “コミットした成果を出すために必要なことは何でもする”とマネージャーが部下に宣言する
      • コミットした成果を出せない問題を言ってこないのは、問題がないからである
      • 私はいつでも必要なことは何でもすると言ってあった。コミットした成果を出せないのは部下の所為である。
  • “成果を出すために困ったことがあれば言ってくれというマネジメント” の論点(捉え方の軸と筋道)
    • 自己責任を基調としたマネジメントでは、人の心は離れ、組織は崩壊する。ひいては、企業の存続を危うくする。
  • “成果を出すために困ったことがあれば言ってくれというマネジメント”理由
    • “成果を出すために困ったことがあれば言ってくれ”と言っているマネージャーに神通力があるとの妄想がある。
    • 自己責任という考え方が浸透している。
    • 短期的成果をあげさえすれば良いという風潮があり、組織能力を高めるマネジメントが軽んじられている。
  • 成果を出す過程を重視し、陰に陽にバックアップする
    • 何故、成果を出す過程を重視し、陰に陽にバックアップするのか
      • 「困ったときはいつでも相談してくれ、力になるから」と言って、担当部門、担当者に無理な数字をコミットさせる管理者がいる。その挙げ句、「あれほど相談してくれと言ったのに、相談に来なかったから問題がないと思っていた。それなのにコミットした数字を上げることができなかったのは、あなたたちの責任である」と言って数字が上がらない理由を部下の所為にする。
      • よく考えてみれば、自分の管理者としての無能さを、現場担当者の所為に押しつけようとする巧妙な手口であるが、多くの人は、この話術に上手く乗せられ、悔しい思いをする。そして、そんな行為を放置している組織は、結束力を失い衰退していく。
    • 如何に、成果を出す過程を重視し、陰に陽にバックアップするか
      • 大事なことは、管理者が、権限を担当部門や担当者に委譲して任せるにしても、まずは、状況の推移に目を配り、気を配り、心を配って見守ることである。
      • そして、一緒の目線で困りごとを感じ、現場の人達が自分達だけで頑張ろうとし、何とかしようとしてもがいている時にだけ、自ら手を差し伸べて“成果を出すために、その過程で必要な支援をする”ことである。
      • 得られた成果は、成功は担当部門や担当者の手柄であり、失敗は管理者の責任となる。管理者は、担当部門や担当者の成功という、数字上の業績も、指導者としての実績も得ることができる。一方、担当部門や担当者の失敗の責任を負わなければならないということは、数字上の責任もさることながら、担当部門や担当者を成功に導く重い責任を負っていると自覚させる意味がある。


職場環境(安心・安全、衛生、心身の健康)に無関心である

  • “職場環境(安心・安全、衛生、心身の健康)に無関心である”とは
    • 快適で居心地の良い場所が“良い職場環境”とは言えない。安全・安心、及び、衛生的な環境となるように配慮し、仕事の流れに合った動線、非常時の動線が十分に確保されていることは必要条件でしかない。
    • 人の働き方も千差万別である。個人の好みもあるが、考える時、定型的な仕事をこなす時等によっても、どんな空間が用意されていれば良いかは異なる。時間帯(朝・昼・夜)に応じての明るさの確保、採光の仕方も配慮しなければならない。騒音についての配慮m必要である。こうしたことに配慮することも必要条件である。
    • 社会や市場が多様に変化する時代にあって“職場環境に配慮する”とは、多様な専門性を持った人達が知恵を出し合い協働することのできる空間の創造であり、多様な専門性を持つ人達が自由闊達に議論することのできる場の創造である。
    • “職場環境(安心・安全、衛生、心身の健康)に無関心である”とは、こうしたことへの配慮(心をくばること。心づかい。広辞苑第六版)にかけていることである。
  • “職場環境(安心・安全、衛生、心身の健康)に無関心である” の論点(捉え方の軸と筋道)
    • 多様な生き方や価値観を求める時代に、画一した規格品さえ作っていれば良いという昔ながらの職場環境は通用しなくなってきた。多様性を実現するための様々な専門性を持つ人達と協働するための職場環境が求められている。
    • 多様性を実現できなければ競争力を失う。ひいては、企業の存続を危うくする。
  • “職場環境に無関心である”理由
    • “箱物をどうするか”の発想しかない。
    • 安全・安心、衛生、メンタルヘルスケアができていれば良いというだけの発想しかない。
    • 職場の5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の発想に縛られている。
  • 協働して働く環境を創る(場づくり、人づくり、人間関係づくり)
    • 何故、協働して働く環境を創る(場づくり、人づくり、人間関係づくり)のか
      • 必要条件としての職場環境の整備としては、旧来の施策を例としてあげることができる。
        • 職場の安全・安心、従業員の健康、特に、職場のメンタルヘルスケアの重要性が強調されて久しい。組織として約束を守るためにも、社会や顧客に価値を提供し続けるためにも、これらは不可欠な要素である。
        • 一緒に働く人達の安全・安心、健康、メンタルヘルスケアを図ると言っても、その範囲は広い。しかし、もっと広い範囲で、その人達や家族の暮らし、将来への不安を一緒に考えていかなければ、職場の発展は維持できない。例えば、
        • 5S、特に、整理・整頓・清掃により、衛生的で居心地地良い職場環境を自分達の手で創る(5Sは、効率向上のためばかりではない)
        • 災害ポテンシャルを排除した安全・安心な職場環境を実現する
        • 労働条件を改善し、従業員の健康にも気を配る
        • 職場の人間関係にも留意して、心の健康にも心配りをする
        • 通勤の安全、特に、深夜になるときの安全、飲み会等での飲み過ぎた人の帰宅の確認等にも心配りをする
        • 防災、災害時の出社と帰宅、出張者の被災と帰宅の確認、在宅時の安否確認などにも留意する
        • 従業員の将来への悩みにも相談に乗る
        • 従業員の暮らし、家族の健康、両親の老後の生活や介護、子供の教育の悩みにも相談に乗る
        • 住宅ローン等の金銭面での悩みにも相談に乗る 等
      • 社会や市場が多様に変化する時代にあって、多様な専門性を持った人達が知恵を出し合い協働することのできる空間、多様な専門性を持つ人達が自由闊達に議論することのできる場が創造されなければならない。
        • 多様な専門性を持った人達が知恵を出し合い、協働することのできるバーチャル空間とリアルワールドでの空間でつながることができる。
        • 既存事業に囚われたパワーストラクチャ(権力構造)から隔離された環境も必要である。
    • 如何に、協働して働く環境を創る(場づくり、人づくり、人間関係づくり)をするか
      • 旧来の必要条件としての職場環境の整備の基本は、行政の指導内容に遵守する。
        • 安全・安心な職場にするためには、形式的な活動ではなく、常に、お互いに意識して、自らが職場環境の保全に務めなければならない。
        • 大きな組織になれば安全委員を設けるなどの施策が必要になる。安全パトロール等の監視活動も大事であるが、監視されるからではなく、自らが自分達の身を守るための活動であるという意識が重要である。
        • 災害時の防災マニュアル整備、役割分担といった自衛的な施策を決めておくこともリスク管理として重要である。しかし、実態に合わせたものでないと役に立たない。
      • 多様な専門性を持った人達が知恵を出し合い協働することのできる空間、多様な専門性を持つ人達が自由闊達に議論することのできる場の創造として、以下の点が重視されなければならない
        • 個人のデスクのあり方(固定席、バーチャル席)ばかりでなく、様々なシーンでの協働ができるリアルスペースのデザイン
        • オンサイト、オフサイトのコミュニケーションスペースのデザイン
        • ネットワーク上の協働空間のデザイン
        • ネットワーク上のコミュニケーションスペースのデザイン
        • ネットワーク上でのコミュニケーションスペース上でリアルタイムに情報分析(仮説と検証)、知識探索ができる仕組みのデザイン
        • 協働してシナリオを生成する仕組みのデザイン


関連事項

  1. 組織文化の視点で捉える経営課題


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