「経済環境変化を先取りして投資回収率の良い分野に経営資源を集中する」の版間の差分
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*日銀短観、政府の経済基調、国際収支統計、プライマリーバランス、日本国債等の格付け | *日銀短観、政府の経済基調、国際収支統計、プライマリーバランス、日本国債等の格付け | ||
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2015年4月18日 (土) 15:30時点における版
ここでは、「経済環境変化を先取りして投資回収率の良い分野に経営資源を集中する」という課題に対して、どの様に変化やその兆しを捉えて、戦略を構想したらよいか説明する。
経済環境の変化や兆しを捉える
経済的環境の変化を様々な数値で捉える
大局的に、長期的にグローバル全体として経済動向を捉えておくことが必要である。
- OECDの経済成長見通し、貿易統計等の報告書
- ILOの年次報告
また、長期的にグローバル全体として経済動向を背景として、現在の日本の経済動向を捉えておかなければならない。特に、グローバル経済化した現在の経済環境においては、輸出に頼っている企業での収益への為替相場の影響、原材料を輸入に頼っている企業における原価への為替相場の影響ばかりでなく、そうした諸事情が巡り回って国内市場においても、常に為替相場が販売にどう影響するかを考えておくことが求められる様になってきている。
- 日銀短観、政府の経済基調、国際収支統計、プライマリーバランス、日本国債等の格付け
- 人口動態、社会保障の負担額、公共投資先と投資額
- GDP(名目と実質)、物価、企業の設備投資、在庫状況、有効求人倍率、完全失業率
- 政策金利、為替レート、平均株価、金利、マネーサプライ、投資家の投資行動
マクロな視点で経済環境を捉えているだけでは手遅れになる。大事なことは、足下の経済動向を捉えて打つべき戦略を考えることである。
- 自分の属する業界の景況観
- 顧客企業やその関係先の属する業界の景況観
- 街場の景況観
一方、様々に打つべき戦略を考えるにしても、自社の財務状況がどうであるかを冷静に捉えて判断することが必要である。
- 売上、利益、キャッシュフロー、内部留保
- 売上高成長率、営業利益率、経常利益率、総資産回転率、自己資本比率、有利子負債比率
- 売上高/人、営業利益額/人
データから読み解く経済環境の変化と経営資源を集中する上での論点
経済的な環境変化を先取りするという視点で真っ先に思い浮かべることは、為替相場が国内の販売にどう影響するか である。
様々な景気変動の全ての時点で 売上を毎年伸ばしていく必要は本当にあるのか という視点も必要である。景気変動で特に不況の時期には、自社の財政状況も勘案して、まずは投資回転率を上げることに集中し、余計なコストを削減して事業に投資した資金の回収を図り経営の健全化を図ること、という視点も必要である。
経済環境変化を先取りして投資回収率の良い分野に経営資源を集中するために
不況が長引くと景気刺激のために金融当局は政策金利の引き下げや量的緩和策を打ち出し、政府も公共投資によって市中にお金が回るようにとの政策を講じる。旧来は短期的視点での政策が通用したが、国・地方の財政が逼迫し財政規律の厳格適用と緊縮財政が求められるようになると、そうした政策は敬遠されて成長戦略が重要視される。一方、企業の財政状態も苦しくなり、事業への投資も縮小していく。金融機関も倒産のリスクを避けるために貸し渋りや貸しはがしを模索する。
しかし、この時期にこそ低金利での融資が可能であり、成長戦略に沿った事業計画には国・地方の支援(助成金、補助金)が見込まれる。但し、日本では、事業のリスクを背負わない風潮が強く、資金力や担保力、投資した事業の失敗を穴埋めするだけの財力があればのことである。景気の動向と企業の財政状況のどこに位置するかを見極めた事業プランが求められる。
経済的環境の変化を企業の財務状況の視点で捉える
景気の動向(景気、基調判断)と財政状況(潤沢・逼迫、成長率)の下記の4つの場合のどこに位置するかで、事業の売上高成長率、投資利益率の向上のための戦略をどうするかを考えることが必要である。
- 今後、好景気となることが予測される経済環境において
- 潤沢な財政状況下で、事業の売上高成長率、投資利益率の向上を考える場合
- 逼迫する財政状況下で、事業の売上高成長率、投資利益率の向上を考える場合
- 今後、不景気となることが予測される経済環境において
- 潤沢な財政状況下で、事業の売上高成長率、投資利益率の向上を考える場合
- 逼迫する財政状況下で、事業の売上高成長率、投資利益率の向上を考える場合
投資回収率を考える
企業経営で考えなければならないことは、個々の事業の短期的な業績ばかりではなく、企業全体としての成長とブランド価値の向上とである。 そのためには、個々の事業について経営全体の視点から、研究開発費や設備導入に関わる初期投資、人的資源への投資、在庫投資などの運用コストを支払っても更にそれを上回る利益が得られるか、それを原資として新たな事業の開発が可能かどうか、すなわち、短期的な視点での投資利益率よりも、下記の費用に資金を投資し続けても得られる利益で回収ができるかという投資回収率が、経営上の投資判断として重要となる。
- 売価と販売数量
- 研究開発費と設備投資(初期費用)
- 人件費(販売に関わる人件費、教育コスト等)
- 在庫投資(仕入原価、製造原価)
- ブランディング、販売促進に関わる費用
- サービス提供に関わる費用
- 業務のマネジメントに要する費用(管理費)
- 資金調達コスト 等
投資回収率の良い分野に経営資源を集中するには
売上構造の改革(売上高成長率拡大を意図した戦略展開)
“売上高成長率拡大を意図した戦略展開” を考えるのは以下の理由による。
- 直接的には、売上から利益が得られ、キャッシュインの源泉となる。売上高成長率拡大により、株主価値の増大へとつながる。
- 売上高成長率拡大を意図した戦略展開のためには、市場開拓、顧客開拓、商品開発、技術開発、ビジネスモデル開発、販売力強化(「作れば買ってくれる」の販売戦略から「提案型営業への転換」)を図ることが必要であり、ひいては、企業の持続可能な成長へとつながっていく。
売上高成長率拡大を意図した戦略展開の外形的類型例を以下に示す。
- (PlanA)社会の変化に伴う市場規模・ポジショニングの変化に即した事業の再編
- (PlanB)長期的にコーポレートブランドを植え付けていく戦略展開
- (PlanC)コアビジネスから隣接するビジネス、サービス化、知識化への戦略展開
- (PlanD)新興国市場への戦略展開
売上高成長率拡大を意図した戦略展開は外形的な取り組みでは実現できない。社会の変化に対して自社内の意識が向けられている方向性と位置付け(変化の創造、変化への適応(先行、後発))の関係から、どの様に取り組むべきかが制約される。
- これまでの発想にとらわれず、新たな「あったらいいのに」を創り出す
- 新たな需要、市場を創り出す
- ビジネスチャンスを捉えて、事業を拡大する
- その先にある 「あったらいいな」 を創造する
その上で、組織の持つ弱みを強化するために、何に優先して取り組むべきかが決まる。
- 商品力が弱い ⇒ 顧客目線で考える能力を強化する
- 販売力が弱い ⇒ 顧客中心に行動する能力を強化する
- ビジネスモデル構築力が弱い ⇒ ビジネスモデル構築能力の不足
- 顧客訴求力が弱い ⇒ 商品の魅力を醸し出す能力を強化する
- 技術力が弱い ⇒ 技術革新能力を強化する
- 開発力が弱い ⇒ プロデュース力を強化する
利益・コスト構造の改革(利益率増大を意図した戦略展開)
“利益率増大を意図した戦略展開” を考えるのは以下の理由による。
- 直接的には、キャッシュインの源泉となる。利益率の増大を図ることにより株主価値の増大へとつながる。
- 売上高成長率増大の戦略展開だけでは、経営戦略として不充分である。景気変動等の要因により売上高は大きく変動する。こうした外乱要因の影響の中で生き残るるために多角化や海外展開などの新市場開拓戦略をとることも考えられる。しかし、こうした新たな投資が必要な施策を打つ前に、まずは、差別価値を創造して商品の高価格化を図る、原価低減を図る、販売費や一般管理費の削減を行う利益率増大を意図した戦略展開を考えるべきである。
- “利益率増大を意図した戦略展開”をとることにより、内発的に、且つ、自然発生的に現場でのプロセス改革への取り組みが浸透し、組織は、様々な工夫を考案する創造的となる。高利益率の企業は環境変化にも強く、競争力のある企業と言える。
- 不況だからといって、すぐに人員削減することは、利益率増大を意図した戦略展開とは言えない。人員削減は、組織の様々な能力を著しく損なう。
利益率増大を意図した戦略展開の類型例を以下に示す。
- どの企業も手掛けていない商品、市場分野に打って出る
- 先行者で市場が成長しているうちに多くの利益を獲得する
- 低価格で提供できるように仕入原価、生産原価、経費を削減する
- 全体で低価格で提供できるように調達、販売チャネルを組み直す
- 不採算事業になり始めたら、折角作り上げたブランドであっても拘らずに撤退する
低コスト生産地拠点化によるコスト競争優位化の展開
“低コスト生産地拠点化によるコスト競争優位化の展開” を考えるのは以下の理由による。
- 直接的には、利益の増大、キャッシュの増大となり、株主価値の増大へとつながる。
- 低コスト生産地拠点化によるコスト競争優位化の展開として、人件費の低い地域、原材料を低コストで調達できる海外地域に生産拠点を移すことも考えられる。この場合、技術力などの海外流出、技能をベースに構築してきたサプライチェーン、市場や顧客のニーズを吸い上げてフィードバックするデマンドチェーンとしての販売網、地域社会と培ってきたコミュニティの破壊を伴うものである。
- また、産業の空洞化、地域社会の雇用喪失を伴うものでもある。こうしたリスクを最小化することの上に“低コスト生産地拠点化によるコスト競争優位化の展開”を考えるべきである。
低コスト生産地拠点化によるコスト競争優位化の展開手順例を以下に示す。
- 労務費、現地調達が可能な材料費、輸送費、在庫費が低い候補地域を洗い出す
- 労働力の確保、現地での原材料の確保、カントリーリスクのない地域を選定し生産拠点を移転する
- 低コスト生産拠点移転による製造原価低減状況を見て、必要であれば改善する
- 低コスト生産拠点移転による輸配送コスト削減状況を見て、必要であれば改善する
- 低コスト生産拠点移転による在庫コスト削減状況を見て、必要であれば改善する
拠点化による設備集約化を意図した戦略展開(効率的な設備投資戦略)
“拠点化による設備集約化戦略” を考えるのは以下の理由による。
- 直接的には、設備稼働率の向上や遊休設備の圧縮、ひいては、投下資本回転率向上へとつながる。
- 拠点化により、原材料の一括発注や集中購買、技能者の集中化による融通性のある横展開の実現ととプロセスの改革、技能者同志のコミュニケーションが活性化し相乗効果によるの新たな技術の開発が可能になる。
拠点化による設備集約化戦略の展開項目例を以下に示す。
- 生産の拠点集約化により設備等の重複投資を圧縮する
- 調達業務の拠点集約化により設備等の重複投資を圧縮する
- 物流の拠点集約化により設備等の重複投資を圧縮する
- 販売の拠点集約化により設備等の重複投資を圧縮する
- サービスの拠点集約化により設備等の重複投資を圧縮する
また、拠点化による設備集約化戦略の論点、特に、生産拠点の集約化の論点を以下に示す。
- 複数の工場における生産状況を評価し、拠点集約化の可否を検証する
- 生産拠点集約化に伴う設備投資額、運転コストを想定し、拠点化の可否を検討する
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